ツアーの回想。理想郷、色川
12月初旬に那智勝浦町、色川にて、13名の訪問者を連れて招待制のツアーを実施した。色川は、PlanetDAOの第1ロケーション候補となっている場所。
参加者の日本国内在住・海外在住の比率は約半分で、そのうちの2名はなんと海外からわざわざこの色川ツアーに参加する為だけに予定を調整して日本に来てくれた。更に、うち1名は日本が初めてだったそう。(初めての日本旅行で那智だけに来るのはおそらく彼だけだと思う!)
3泊4日のツアー。初日だけ熊野古道での観光(DMOさんがコーディネート、普段は未公開の場所などを見せてくださった)をし、他のほとんどの時間は色川でゆっくり過ごした。しめ縄作りやお餅つきなど色川の人の方々と一緒に手を動かしたり、棚田の保全活動をされている方の話を聞いたり、地域の共同貯水の仕組みなど、色川の暮らしを見れるような行程に。
主催者が言うのもなんだが、お世辞なしに、全く素晴らしい時間だった。それぞれ全く違ったバックグラウンドの人が集まっているのに、皆に共通項があった。今この瞬間を共有していることやこの出会いに感謝すること。肩書きなどでジャッジすることなく、あるがままの姿を見ること。それができる人たちの集まりだったし、色川という場所はそういう価値観のあり方を引き出して受け入れてくれる場所だった。
コロナの前には観光ビジネスをやっていた身からすれば、東京・大阪・京都などのゴールデンルートを巡る観光は既にオーバーツーリズム状態。「本当の日本」の姿がそこにあるかと言われると、そうではなくなっているのが現実ではないか。みんな、東京を見たい、京都をみたいから旅行をしているわけではなく、新しい発見や経験を求めてわざわざ遠い日本まで来るのではないか。
今回のツアーでは、余裕のある場所で、余裕のある時間を過ごすことによって、色川の人たちの考えや、生き様などの、あるがままの姿を見ることができた。一度立ち止まり、自分の人生のあり方を振り返る機会になったという話も参加者からあった。
そして今回より明らかになったけれど、このプロジェクトの価値は、土地の共同所有できるトークン自体は前提ではあるけれど、その地域の人たちと復興に向けて一緒に働くそのプロセス自体に価値がある。
色川に対して可能性を感じると共に、改めてすごく面白いことになりそう。
「色川はみんなの理想を詰め込んだ場所やからなぁ」
那智勝浦に住む人たちに色川のことを話すと、みんなはそう言う。
理想郷、色川。
移住者が来続けているこの集落は、300人の居住者のうち半分以上は移住者で構成されている。人口減少による空き家問題や、獣害などの地域が抱える課題はたくさんあれど、これらの課題は外から来る人たちが色川に住まない理由にはなっていない。
みなさんはなぜ移住されるのですか?という私の質問に対する、地域のリーダー的存在の原さんの答えは「移住した人たちはこの土地に「居場所感」を感じている。」というものだった。
なぜその場所が面白いのか?という質問に対して「自然が豊かだから」「山頂からの景色が綺麗だから」それらはあるのだけどそれらだけではない、簡単な言葉で説明してしまうことに違和感を感じていたけれど、まさに「居場所感」は色川の魅力。
何度か訪れている色川が、他の訪問者を連れてくることによって、また彼らに紹介することによって、私たちの色川に対する理解も深くなり、大きく変わった部分もあった。
色川で暮らす人の挨拶はおはよう、こんにちは、こんばんは、の代わりに、「おおきに」。これは関西弁で「ありがとう」という意味だが、毎度お世話になっているという気持ちを表している。他の色川に住む人たちや先代に対してなど、感謝の気持ちが色川には点在している。
また、色川には「我がら」という言葉がある。何かを行動する時も、決め事をする時にも、「私は」という価値観ではない。先代や他の色皮に住む人たちのことが必ず頭にある中で皆行動している。
人生には色々なことがある。そんな中で色川にくる。社会の大きな流れから離れ、自分を見つめ直したい時。色川に来て「感謝」を全身で感じることで新しい自分を発見できる。そんな、本当の心の居場所がここにはあるように思う。
色川地区が存在する、那智勝浦町は古来より多くの人々が参詣した熊野三山を構成する3つの町の1つだ。熊野那智の地は「黄泉がえりの国」として知られる生まれ変わりの聖地として古くから多くの人々に信仰されてきた。
那智勝浦町の色川地区もまた、この熊野の精神やストーリーを受け継いでいる地域だと感じる。
とっても魅力的な、色川。
次は春頃にもツアーができたらいいなと思っている。